着床不全に関する検査

良好な受精卵(胚)を4個以上かつ3回以上移植しても妊娠に至らない場合を、反復着床不全(repeated implantation failure;RIF)といいます。
着床不全の原因には、① 胚の問題(遺伝子異常など)以外に、② 子宮の問題(子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮内膜の炎症、子宮内膜着床時期のずれなど)や、③ 母体の問題(免疫異常など)が考えられます。

当院では着床不全に関する最新の検査と治療を行っております。

ERA検査(先進医療)

子宮内膜着床能検査ERA:Endometrial Receptivity Analysis)とは、子宮内膜の遺伝子発現を解析し、最適な胚移植時期を調べる検査です。

子宮内膜が胚を受容できる期間、いわゆる「着床の窓(Window of Implantation)」は、排卵6日目から4~5日続くとされていました。しかし、反復着床不全の約30%で「着床の窓」にズレがあると報告されており、ERA検査の結果をもとに移植時期を補正することで、着床率の向上が期待できます。

検査の流れ

1. 自然周期、またはホルモン補充周期で子宮内膜を整えます。
2. 胚移植と同様のタイミングに、細い器具で子宮内膜を採取し、遺伝子検査を行います。
3. 検査結果は2〜3週間程度で出ます。医師より結果をご説明します。
4. 検査結果に基づき、胚移植のタイミングを調整します。

リスクと副作用

  • 痛みや不快感:子宮内膜を採取する際に、生理痛のような痛みや違和感を感じることがあります。多くの場合は、数分間で治まります。
  • 少量の出血:検査後に少量の出血が見られることがあります。多くは一時的なもので、数日で治まります。
  • 感染:子宮内膜を採取する手技により、ごく稀ですが子宮内感染などが起こる可能性があります。
  • 子宮の収縮:検査後に子宮が一時的に収縮し、軽い腹痛を感じることがあります。

ERA検査の意義

  • 着床のタイミングを分子レベルで解析し、胚移植の成功率向上が期待されます。
  • 従来の方法ではわからなかった「着床の窓のズレ」を明らかにできる可能性があります。

ERA検査の限界・注意点

  • 他の要因の重要性:すべての着床不全の原因が「着床の窓のズレ」ではないため、他に原因がある場合は、ERA検査だけを行っても、着床不全は解決しません。
  • 費用対効果:ERA検査は保険適応外の検査であり、患者様の経済的負担が大きくなります。
  • エビデンスの限界:ERA検査に関するエビデンスは一定の蓄積がありますが、妊娠率の上昇を示すデータは限定的です。
  • 検査結果の解釈:検査結果はあくまで一つの指標であり、必ずしも妊娠を保証するものではないことに注意してください。

上記のことに注意し、検査をご検討の際には、これまでの治療経過などを踏まえて担当医師と十分に相談し、理解した上で判断されることをお勧めします。

EMMA検査(先進医療)

子宮内膜マイクロバイオーム検査EMMA:Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)とは、子宮内膜に存在する細菌の種類と量を遺伝子レベルで解析し、そのバランスを調べる検査です。

子宮内膜の細菌、なかでも乳酸桿菌(ラクトバチルス)の割合が着床や妊娠率に影響を与えることが報告されており、このバランスが崩れると着床率が低下する可能性があります。細菌のバランスによって乳酸桿菌を増やす治療や、細菌を減らす治療が推奨されます。

検査の流れ

1. 自然周期、またはホルモン補充周期で子宮内膜を整えます。
2. 胚移植予定時期に、細い器具で子宮内膜を採取し、遺伝子検査を行います。
3. 検査結果は2〜3週間程度で出ます。医師より結果をご説明します。
4. 検査結果で乳酸桿菌が90%以下の場合には、乳酸桿菌を腟剤で補充します。また、乳酸桿菌以外の細菌が10%以上検出される場合には、抗菌薬加療を追加します。

検査のリスクと副作用

  • 痛みや不快感:子宮内膜を採取する際に、生理痛のような痛みや違和感を感じることがあります。多くの場合は、数分間で治まります。
  • 少量の出血:検査後に少量の出血が見られることがあります。多くは一時的なもので、数日で治まります。
  • 感染:子宮内膜を採取する手技により、ごく稀ですが子宮内感染などが起こる可能性があります。
  • 子宮の収縮:検査後に子宮が一時的に収縮し、軽い腹痛を感じることがあります。

EMMA検査の意義

  • 検査結果に基づいた個別の治療が可能となり、胚移植の成功率向上が期待されます。
  • これまで分からなかった子宮内環境を詳細に把握することで、着床不全の原因を探ることができる可能性があります。

EMMA検査の限界・注意点

  • 他の要因の重要性:すべての着床不全の原因を検出できるわけではありません。他に原因がある場合は、EMMA検査だけを行っても、着床不全は解決しません。
  • 費用対効果:EMMA検査は保険適応外の検査であり、患者様の経済的負担が大きくなります。
  • エビデンスの限界:子宮内細菌叢と妊娠率の関連性は徐々に明らかになってきていますが、エビデンスはまだ限定的であり、必ず妊娠率が向上するわけではありません。
  • 治療効果の個人差:検査結果に基づき治療を行っても、必ずしもすべての患者様に効果が得られるとは限りません。

上記のことに注意し、検査をご検討の際には、これまでの治療経過などを踏まえて担当医師と十分に相談し、理解した上で判断されることをお勧めします。
EMMA検査は、ERA検査と同時に検査することが可能で、ALICE検査と併せて検査することをおすすめしております。

ALICE検査(先進医療)

感染性慢性子宮内膜炎検査ALICE:Analysis of Infectious Chronic Endometritis)とは、慢性子宮内膜炎の原因となる10種の菌が子宮内に存在するかを調べる検査です。

慢性子宮内膜炎は子宮内膜の持続的な炎症で、不妊症女性の約30%に認められると報告されています。原因となる菌が検出された場合には、抗生剤治療が推奨されます。

検査の流れ

1. 自然周期、またはホルモン補充周期で子宮内膜を整えます。
2. 胚移植予定時期に、細い器具で子宮内膜を採取し、遺伝子検査を行います。
3. 検査結果は2〜3週間程度で出ます。医師より結果をご説明します。
4. 検査結果に基づき、検出された病原菌に対して抗生剤治療を行います。

検査のリスクと副作用

  • 痛みや不快感:子宮内膜を採取する際に、生理痛のような痛みや違和感を感じることがあります。多くの場合は、数分間で治まります。
  • 少量の出血:検査後に少量の出血が見られることがあります。多くは一時的なもので、数日で治まります。
  • 感染:子宮内膜を採取する手技により、ごく稀ですが子宮内感染などが起こる可能性があります。
  • 子宮の収縮:検査後に子宮が一時的に収縮し、軽い腹痛を感じることがあります。

ALICE検査の意義

  • 自覚症状のない慢性子宮内膜炎を正確に診断し、その原因となっている菌特定できます。
  • 検出された菌に有効な抗菌薬を選択できるため、効率的で効果的な治療が期待されます。
  • 慢性子宮内膜炎が原因で着床できなかった方にとっては、適切な診断と治療を行うことで、妊娠の可能性を高めることができます。

ALICE検査の限界・注意点

  • 他の要因の重要性:すべての着床不全の原因を検出できるわけではありません。他に原因がある場合は、ALICE検査だけを行っても、着床不全は解決しません。
  • 費用対効果:ALICE検査は保険適応外の検査であり、患者様の経済的負担が大きくなります。
  • エビデンスの限界:慢性子宮内膜炎と妊娠率の関連性は徐々に明らかになってきていますが、エビデンスはまだ限定的であり、必ず妊娠率が向上するわけではありません。
  • 治療効果の個人差:検査結果に基づき治療を行っても、必ずしもすべての患者様に効果が得られるとは限りません。

上記のことに注意し、検査をご検討の際には、これまでの治療経過などを踏まえて担当医師と十分に相談し、理解した上で判断されることをお勧めします。
ALICE検査は、ERA検査と同時に検査することが可能で、EMMA検査と併せて検査することをおすすめしております。

TRIO検査(先進医療)

TRIO検査とは、ERA・EMMA・ALICE検査のセットで、一度の子宮内膜生検で同時に検査することが可能です。
同時に検査することで、子宮内膜の状態を総合的に判断することができます。

検査実施会社:株式会社アイジェノミクス・ジャパン

CD138検査

CD138検査とは、慢性子宮内膜炎の有無を調べる検査です。

慢性子宮内膜炎は子宮内膜の持続的な炎症で、不妊症女性の約30%に認められると報告されています。炎症を起こした子宮内膜の細胞はCD138が陽性となり、CD138陽性細胞が複数個認められた場合に慢性子宮内膜炎と診断することができます。治療には抗生剤の内服が推奨されます。

検査の流れ

1. 月経終了後から排卵期までの時期に検査を行います。
2. 細い器具で子宮内膜を採取し、特殊な免疫染色を行い、CD138陽性細胞の存在を調べます。
3. 検査結果は2〜3週間程度で出ます。医師より結果をご説明します。
4. 慢性子宮内膜炎と診断される場合には、抗生剤治療を行います。

リスクと副作用

  • 痛みや不快感:子宮内膜を採取する際に、生理痛のような痛みや違和感を感じることがあります。多くの場合は、数分間で治まります。
  • 少量の出血:検査後に少量の出血が見られることがあります。多くは一時的なもので、数日で治まります。
  • 感染:子宮内膜を採取する手技により、ごく稀ですが子宮内感染などが起こる可能性があります。
  • 子宮の収縮:検査後に子宮が一時的に収縮し、軽い腹痛を感じることがあります。

CD138検査の意義

  • 慢性子宮内膜炎を病理学的に診断することが可能です。
  • 慢性子宮内膜炎と診断された場合には、抗菌薬治療を行うことで子宮内環境を改善できる可能性があります。
  • 慢性子宮内膜炎が原因で着床できなかった方にとっては、適切な診断と治療を行うことで、妊娠の可能性を高めることができます。

CD138検査の限界・注意点

  • 他の要因の重要性:すべての着床不全の原因を検出できるわけではありません。他に原因がある場合は、CD138検査だけを行っても、着床不全は解決しません。
  • 費用対効果:CD138検査は保険適応外の検査であり、全額自費負担となります。
  • 診断結果の限界:CD138検査では、炎症の原因となっている菌の種類まで特定はできません。
  • エビデンスの限界:慢性子宮内膜炎と妊娠率の関連性は徐々に明らかになってきていますが、エビデンスはまだ限定的であり、必ず妊娠率が向上するわけではありません。
  • 治療効果の個人差:抗菌薬治療を行っても、必ずしもすべての患者様に効果が得られるとは限りません。

上記のことに注意し、検査をご検討の際には、これまでの治療経過などを踏まえて担当医師と十分に相談し、理解した上で判断されることをお勧めします。

Th1/Th2検査

Th1/Th2検査は、着床や妊娠の維持に必要な免疫機構のバランスを調べる検査です。

  • Th1(1型ヘルパーT細胞):細菌やウイルスなどに対する防御反応を強める役割があります。
  • Th2(2型ヘルパーT細胞):アレルギー反応や抗体産生に関わり、細胞性免疫を抑制する役割があります。

着床においては、胚を拒絶するTh1 が減少し、胚を受容するTh2 が優位になります。このバランスが崩れてしまうと、着床不全や流産の原因になることが報告されており、免疫療法が推奨されています。

検査の流れ

1. 採血検査を行い、Th1/Th2細胞比を解析します。
2. 1〜2週間程度で結果が出ます。医師より結果をご説明いたします。
3. Th1/Th2細胞比が高値の場合には、免疫療法(タクロリムス内服)を行います。

タクロリムスとは、本来臓器移植後の拒絶反応などを抑えるための免疫抑制薬です。不妊治療においては、Th1の過剰な働きを抑え、Th2優位な免疫バランスに導く効果があるとされます。

リスクと副作用

  • 採血検査に伴い、疼痛や内出血が起こるリスクがあります。
  • タクロリムス内服に伴い、軽度の吐き気や頭痛、肝機能障害が起こるリスクがあります。

Th1/Th2検査の意義

  • 着床不全の原因が、免疫のバランスの乱れにある可能性を探ることができます。
  • 必要に応じて、免疫療法(タクロリムス内服など)など、個別に治療を検討することができます。
  • 免疫異常が原因で着床できなかった方にとっては、適切な診断と治療を行うことで、妊娠の可能性を高めることができます。

Th1/Th2検査の限界・注意点

  • 他の要因の重要性:すべての着床不全の原因を検出できるわけではありません。他に原因がある場合は、Th1/Th2検査だけを行っても、着床不全は解決しません。
  • 費用対効果:Th1/Th2検査は保険適応外の検査であり、全額自費負担となります。
  • 治療効果の個人差:免疫療法を行っても、全ての患者さんに効果があるとは限りません。また、治療によって必ず妊娠が成立するわけではありません。

上記のことに注意し、検査をご検討の際には、これまでの治療経過などを踏まえて担当医師と十分に相談し、理解した上で判断されることをお勧めします。

料金

保険診療
着床不全に関する検査
  • ERA検査(先進医療)
    132,000円
  • EMMA/ALICE検査(先進医療)
    77,000円
  • TRIO検査(先進医療)
    187,000円

※料金は全て税込価格です。

自費診療(自由診療)
着床不全に関する検査
  • ERA検査
    132,000円
  • EMMA/ALICE検査
    77,000円
  • TRIO検査
    187,000円
  • CD138検査
    22,000円
  • Th1/Th2検査
    22,000円

※料金は全て税込価格です。