不妊治療について

不妊症とは

不妊症とは、特に病気のない男女が妊娠を希望し、避妊をせず性交渉をしても一定期間以上妊娠しない場合を言います。
近年の調査では、世界の6人に1人は不妊症の影響があると言われています。
「一定期間」の定義は年齢などによって異なりますが、症状によっては「一定期間」を待たず早めに不妊症検査や不妊治療についてご相談頂きたいと思います。

不妊症の原因

女性側の原因

排卵障害

ホルモン分泌の異常により、排卵障害が起こることがあります。
原因はさまざまですが、環境の変化やストレス、過度なダイエットによっても排卵障害が起こることがあります。
また、加齢によっても排卵障害は起こりやすくなって行きます。
月経周期が不順、月経が来ないなどのお悩みがありましたら、早めにご相談ください。

卵管の問題

クラミジア感染症や子宮内膜症などにより、卵管周囲が癒着し、卵管が閉塞してしまうことがあります。
卵管が閉塞していると、卵巣から排卵した卵子が子宮に辿り着けず、不妊症の原因となります。

子宮の問題

子宮の内側に子宮筋腫や子宮内膜ポリープを認める場合、卵子と精子の受精を妨げたり、受精卵の着床を妨げてしまうことがあります。
過多月経や不正出血などの症状がある場合、超音波検査をおすすめします。

免疫因子

何らかの免疫異常により抗精子抗体(精子を障害する抗体)や精子不動化抗体(精子の運動を止める抗体)を産生する女性では、精子が子宮内や卵管に辿り着けないため、不妊症の原因となります。
当院では抗精子抗体やヒューナーテスト(女性の頸管粘液と男性の精液の相性を見る)で検査することができます。

原因不明不妊

不妊症検査をしても、原因がわからないことがあります。
なにも異常がないわけではなく、検査では見つからない原因が潜んでいる場合もあります。
明確な不妊原因が分からなくても、不妊期間が長い場合には治療の開始やステップアップが検討されます。

男性側の原因

造精機能の低下

何らかの原因で、精子の数または運動率が低下している状態です。
精巣の炎症や精索静脈瘤、ホルモン分泌の低下などが原因となることがあります。
不妊治療の開始に際しては、必ず精液検査を行うことをおすすめしています。

性機能の低下

勃起障害(ED)や射精障害により、性行為がうまく行かない状態です。
最も多いのは心因性のEDと言われており、不妊治療自体がプレッシャーとなっている場合もあります。

精子の通過障害

精巣内で精子は作られるが、通り道の障害で精液中に精子が出てこない状態です。
精路の再建や精巣内の精子を回収(TESE)することで、挙児の可能性はあります。

不妊治療の方針

不妊症検査により、現在の体の状態を把握した上で、ご希望を伺いながら治療法をご提案いたします。
当院は、自然の排卵リズムとホルモン分泌を大切にし、妊娠する力を最大限に引き出しサポートする不妊治療を目指しています。
また、不妊治療と同時に漢方薬や鍼灸などの東洋医学も取り入れ、妊娠に向けた健康な体作りからサポートいたします。

不妊治療の流れ

検査結果や、患者さまのご希望に応じて、治療計画をご提案いたします。
一定期間ごとに治療計画を見直し、場合によってはステップアップをご提案することがあります。

  1. 01

    不妊検査

    現在の体の状態を把握するために、当院では治療開始前に以下のような検査をご提案いたします。

    女性

    初診時

    感染症検査、AMH(抗ミュラー管ホルモン)、甲状腺機能検査、クラミジア検査、風疹抗体検査、超音波検査

    月経1-3日目

    女性ホルモン検査

    男性

    初診時

    感染症検査、精液検査

    不妊症の原因は様々ですが、不妊治療の目的は「妊娠をする」ことであり「原因を見つける」ことではありません。
    検査を行っても原因が分からないことや、分かってもすぐに治療できないこともあります。
    結果に応じて適切な治療計画をご提案致しますので、まずはどんな検査が必要なのかを含めて、お気軽にご相談ください。

  2. 02

    一般不妊治療

    一般不妊治療とは、卵子と精子が体の中で自然な形で受精するのをサポートする治療で、主にタイミング療法と人工授精があります。

    タイミング療法

    超音波検査で卵巣にある卵胞の大きさを観察することで、排卵日を予測します。
    予測排卵日をもとに、もしくは排卵を促す薬剤を使用し、最も妊娠の可能性が高い排卵1~3日前に性交渉を行っていただきます。

    人工授精

    超音波検査で卵巣にある卵胞の大きさを観察することで、排卵日を予測します。
    予測排卵日に合わせて、もしくは排卵を促す薬剤を使用しながら、採取した精液から活発な精子を回収・洗浄し、細いカテーテルを用いて子宮内に注入します。
    処置後の安静は不要で、自然な受精を待ちます。

  3. 03

    生殖補助医療(ART)

    一般不妊治療で一定期間妊娠に至らなかった場合や、ご年齢や卵巣機能により適応と判断された場合、生殖補助医療(ART)をご提案致します。

    採卵

    腟壁から卵巣に向かって針を刺し、排卵直前の卵子を取り出します。
    採卵に先立ち、月経1〜3日目より卵胞の観察や刺激を開始します。
    当院は治療の負担や副作用を最小限にするために、「自然周期・低刺激周期」を中心とした治療をご提案いたします。

    受精・胚培養

    採卵により獲得した卵子と、精液から回収した精子は、体外受精(ふりかけ法)または顕微授精により受精をさせます。
    当院ではタイムラプス法を採用し、厳重な管理のもと受精卵を分割胚、もしくは胚盤胞まで培養します。

    移植

    受精卵を凍結せず、採卵と同周期で移植する新鮮胚移植と、凍結した受精卵を融解し移植する凍結融解胚移植があります。
    凍結融解胚移植では、自然周期もしくは不足したホルモンを補充するホルモン補充周期により、移植に適した子宮内環境を整えていきます。

  4. 04

    妊娠判定

    一般不妊治療の場合

    治療後に月経が予定日より1週間以上遅れた場合には、妊娠検査薬で妊娠判定を行います。
    妊娠検査薬が陽性になりましたら、詳しい検査を行いますので、ご来院をお願い致します。

    生殖補助医療(ART)の場合

    胚移植後7~10日目に、血液検査により妊娠判定(hCG検査)を行います。
    hCGが陽性となりましたら、妊娠5週前後に超音波検査で胎嚢を確認し、妊娠7週で胎児心拍、妊娠9週目に胎児の姿が確認できれば、当院での治療はご卒業となります。