コラム
妊娠を目指すとき、多くの方がまず行うのが「精液検査」です。これは、精子の数や運動率、形態など、いわば “見た目の指標” を調べるものです。しかし、これらが正常であっても「なかなか妊娠しない」というケースは珍しくありません。
そんなときに注目されるのが、「DFI検査(DNA Fragmentation Index)」です。DFI検査では、精子の中のDNAがどのくらい傷ついているか(=断片化されているか)を数値で評価します。精子のDNAが傷ついていると、受精はしてもその後の胚の発育が止まったり、流産につながったりするリスクが高まることがあります。つまり、DFI検査は「精子の中身の健康状態」を評価する、より本質的な検査といえます。
一般的な精液検査では正常な精子でも、DNAが損傷している(=DFI値が高い)と以下のような影響が考えられます。
DFI検査は、精子のDNA損傷を直接調べられる検査方法です。 不妊の原因解明に役立つだけでなく、今後の治療方針を立てる上で非常に重要な情報となります。特に体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)を行う場合、DFIの値は治療成績に大きく影響します。
また、DFI検査は今年度より「プレコンセプションケア(東京都)」の助成対象検査に追加されており、将来の妊娠に向けた健康チェックにも役立つ検査です!
DFI検査は、以下のようなケースではとても有用です。
こうした場合には、DFI検査によって精子の質をより詳しく評価することで、治療の方向性を見直すきっかけになります。
DFI検査は、精液検査と同時に行います。DFI検査単独では受け付けておりません。
採精前には3~5日ほどの禁欲期間をとっていただき、通常の精液検査と同様、院内もしくはご自宅で採精します。採取した精液を外部の専門機関に送り、DNAの断片化率を解析します。検査結果は2週間以内に報告され、DFI値がパーセンテージで示されます。
DFI値の目安
<15%未満:良好
15-24%:やや高い
≧ 25%:高い(不良)
精液検査の流れについては【コラム:精液検査(実践編)】をご参照ください。
DFI値が高かった場合でも、改善のための方法があります。
精子は約74日かけて作られるため、生活週間を改善した場合効果が現れるまでに 約3ヶ月程度 かかります。
酸化ストレスは精子のDNA損傷の大きな原因とされており、抗酸化作用のあるサプリメントを内服することで、DFI値の改善が期待できます。代表的なものは以下の通りです。
DFI検査の結果をもとにした適切な対策をとることで、妊娠率の向上や流産率の低下が期待できます。男性側の“見えないリスク”をしっかり把握することが、カップルの妊娠への第一歩となります。
はい。精液検査では「数」「運動率」「形」などの見た目の情報は分かりますが、DNAの損傷までは分かりません。妊娠しにくい原因が精子のDNA損傷にあることもあり、特に妊娠に時間がかかっている場合や、不妊治療がうまくいかない場合は、DFI検査を行うことで原因の特定につながることがあります。
DFI値が高い場合でも、自然妊娠の可能性がなくなるわけではありません。ただし、妊娠率が低下したり、流産のリスクが高まる可能性があるため、適切な対策(サプリメント、生活改善、治療方針の見直しなど)を行うことで妊娠の可能性を高めることができます。
DFI検査は保険適用外であり、自費診療となります。
採精の前には3〜5日間の禁欲期間をとっていただきます。また、体調を整え、発熱や感染症がない状態で受けていただくことをおすすめします。
DFI値は生活習慣や治療によって変化するため、サプリメントや禁煙・生活改善などの対策後に、再検査を行うことで改善効果を確認することができます。通常は3か月以上空けての再検査が推奨されます。
※料金は全て税込価格です。