コラム
「Th1/Th2検査」とは、着床不全に関する検査 のひとつです。
着床不全の原因には、①胚の問題(染色体異常など)以外に、②子宮の問題(子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮内膜の炎症、子宮内膜着床時期のずれなど)や、③母体の問題(免疫異常など)が考えられます。
Th1/Th2検査はこのうち ③母体の問題 を調べる検査です。

Th細胞とは「ヘルパーT細胞」のことであり、体内に侵入した「外敵」の情報をもとに攻撃の戦略を決める「司令塔」の役割を果たしています。Th細胞は役割の異なるTh1細胞とTh2細胞に大別され、それぞれがバランスを保って存在することで、体内の免疫機能が働きます。
Th1細胞(1型ヘルパーT細胞):細菌やウイルスと戦うため、免疫の働きを強くする。
Th2細胞(2型ヘルパーT細胞):アレルギー反応などに関わり、免疫の働きを穏やかにする。
Th1/Th2検査では、採血検査により血液中のTh1細胞とTh2細胞を測定し、その比率を用いて体内の免疫機能を評価します。
着床や妊娠の維持にも、「免疫のバランス」が大切です。
前述のように、私たちの体には細菌やウイルスから身を守るための免疫機能がありますが、妊娠の際には免疫が働きすぎないことが大切になります。
免疫の働きすぎると、受精卵(胚)を”異物”と判断してしまい、着床しづらくなると考えられているからです。
Th1/Th2検査は、体内の「免疫のバランス」が妊娠に適した状態であるかを調べることで、着床不全や流産を繰り返す原因の一つとして確認することを目的としています。
「Th2がやや優位」=免疫機能が働きすぎず、受精卵(胚)を受け入れることができる「受け入れモード」
「Th1が優位」=免疫機能がしっかり働いていて、受精卵(胚)を受け入れにくい「攻撃モード」

1. 採血検査を行い、Th1/Th2細胞比を解析します。
2. 1〜2週間程度で結果が出ます。医師より結果をご説明いたします。
3. 必要に応じて、免疫抑制療法を行います。
Th1/Th2検査で「Th1が優位」、つまり受精卵(胚)を受け入れにくい「攻撃モード」である場合には、免疫の働きを抑える目的で、免疫抑制薬の内服を行うことがあります。
タクロリムスは、もともと臓器移植の分野で使用されてきた免疫抑制の薬剤ですが、不妊治療の分野でも反復着床不全に対して投与されるようになりました。移植周期にタクロリムスを内服することにより、Th1細胞の過剰な働きを抑えられ、Th2細胞が優位な「受け入れモード」の免疫バランスに導く効果があるとされます。タクロリムス内服についてはその安全性と、着床率・妊娠率・出生率などの治療成績の改善も認められています。
参考文献
Nakagawa K et al. Reprod Med Biol. 2024
Bahrami-Asl Z et al. Geburtshilfe Frauenheilkd. 2020
※料金は全て税込価格です。
上記のことに注意し、検査をご検討の際には、これまでの治療経過などを踏まえて担当医師と十分に相談し、理解した上で判断されることをお勧めします。
Th1/Th2検査のみを目的とした受診は、当院では受付けておりません。
Th1/Th2検査においては、不妊治療の経過を踏まえたうえで医師が検査に必要性を判断するため、当院で不妊治療を受けられる患者様のみに実施しております。
ご理解のほどよろしくお願いいたします。
Th1/Th2検査は保険適応外の検査であり、全額自費負担となります。
※料金は全て税込価格です。
Th1/Th2検査は、妊娠に影響する可能性のある「免疫のバランス」をみるもので、妊娠できる・できないを決める検査ではありません。
免疫のバランスに偏りがあっても、自然に妊娠・出産に至る方も多くいらっしゃいます。一方で、着床不全や流産を繰り返している場合には、母体の免疫異常が関与している可能性を考え、治療を検討する参考になります。
検査結果だけで判断するのではなく、ご年齢や子宮卵巣の状態、これまでの治療経過などを総合的にみて、治療方針を検討します。
Th1/Th2検査はすべての方に必要な検査ではありません。
通常は反復着床不全(良好な胚を3回移植しても着床しない)や、流産を繰り返しているなどの場合に検討され、それぞれの患者様の治療経過を踏まえて医師が必要性を判断します。
検査を検討されたい方は、お気軽に医師や看護師にご相談ください。
不妊治療におけるタクロリムスに内服については、重篤な副作用の可能性は低いと考えられます。
ただし、腎臓機能の低下や高血糖などの影響が出ることがあるため、必ず医師の指示通り内服し、診察を受けてください。