コラム
東洋医学では、「気・血・水」は身体を構成する基本の要素であると考えます。この3つの要素が過不足なく全身を巡り、「五臓」「六腑」がバランスよく働いている状態が健康であり、妊娠しやすい身体であると言えます。「気・血・水」のうちのどれかが不足したり、巡りが悪くなりバランスを崩すと、身体に不調をきたします。
東洋医学では、独自の「四診(ししん)法」を用いて、「気・血・水」と「証(しょう)」の2つのものさしにより、全身を総合的に診察します。一人ひとりの症状と体質に合わせた治療法を導きだし、「気・血・水」のバランスを整えることで、本来持つ自然治癒力や免疫力を高めます。これにより健康な身体、および妊娠しやすい身体へと体質を改善していきます。
東洋医学において、「気・血・水」は身体を構成する基本の要素です。
「気・血・水」のバランスが崩れると身体に不調をきたし、体質が変わります。
気が不足すると「気虚」になり、エネルギー不足になるため、体が疲れやすくなります。
気が流れが滞ると「気滞」になり、イライラしやすくなります。
血が不足すると「血虚」になり、栄養不足になります。
血の流れが滞ると「瘀血」になり、痛みがでやすくなります。
水が不足すると「陰虚」になり、皮膚乾燥・便秘などになりやすくなります。
水の流れが滞ると「水滞」となり、浮腫み・下痢などが起こりやすくなります。
東洋医学は自然科学であり、人は自然界の一部であると考えています。
自然界のすべてのものは相反する陰と陽から成り立っている「陰陽」説があり、自然界の変化や関係性を木・火・土・金・水の5つの要素に分類し、お互いの性質を時に助け、時に打ち消しながら調和していく「五行」説があります。
「五行」説を身体に応用したのが、「五臓」説です。
東洋医学の「五臓」は解剖学的な意味よりも、人体の働きや機能を表しています。「五臓」には肝・心・脾・肺・腎があり、「気・血・水」を生成・貯蔵します。「六腑」には胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦があり、食べ物を消化・吸収して運び、残ったカスを排泄します。
「五臓」は独立した臓器ではなく、お互いに協力しバランスを整えることで、私たちの身体を心身ともに健康な状態に維持しているとされています。
五臓のなかでも月経や妊娠には「腎」「肝」「脾」が深く関わっており、特に「腎」が最も重要な役割を果たしています。
「腎」は、生命の根本であり、人間の成長・発育・生殖に密接に関わっています。
腎は生命を維持するエネルギー源である「精」を蓄えています。「精」には、両親から受け継いだ「先天の精」と、生後に食べた物を消化・吸収して生成する「後天の精」があります。「先天の精」は減る一方で増えることはないので、「脾(胃)」で生成された「後天の精」によって補われます。
加齢や不適切な生活習慣などにより「腎精」は減少し、腎の機能が低下します。「腎精」が減少すると、妊娠しにくくなったり、妊娠しても流産しやすくなることがあります。
「腎」の機能の低下には、体を潤す力が不足する「腎陰虚」タイプと、体を温める力が不足する「腎陽虚」タイプがあります。「腎陰虚」タイプは、病気による消耗や不摂生などが原因で起こる可能性があります。「腎陽虚」タイプは温める作用が低下しているために、体や子宮の冷えによる不妊が起こりやすい状態です。
「肝」は血液量を調整し、全身の気の流れをスムーズにします。情緒や感情に影響されやすいため、ストレスにより情緒が不安定になると、血液量の不足したり、気の流れが滞ってしまい、妊娠しにくくなることがあります。
「脾」は胃と協力して、食べ物を消化・吸収し、気血という栄養物質(=「後天の精」)を作って全身に送り出しています。脾の働きが低下すると、気血が十分に作られず、全身の機能が低下します。
気血の流れが悪くなり、老廃物がたまりやすくなると、排卵障害などを引き起こす可能性があります。
「 証(しょう)」とは、一人ひとりの体力や、病気に対する抵抗力などを示す指標です。
漢方では「証」に合わせて漢方薬の処方を行うため、同じ症状を示していても、「証」が違えば違う薬が処方されます(=同病異治)。逆にまったく異なる症状を示していても「証」が近ければ、同じ薬が処方がされることもあります (=異病同治)。
「四診(ししん)」とは、触覚・視覚・聴覚・嗅覚(・味覚)の五感を使って、病気の性質(身体に何が起きているか)と病気の部位(身体のどこで起きているか)を把握する診断方法です。病気の性質と部位が分かれば、一人ひとりの症状と体質に合わせた治療法が決まります。
このように、東洋医学で独自の理論や診断法を用いて一人ひとりに合わせた治療法を導きだします。
弱くなったところ補強し、滞ったところを疎通し、溜りすぎたものを除去することで「気・血・水」のバランスを整え、人が本来持つ免疫力や妊娠する力を高めます。
次回のコラムでは、これらの東洋医学の考え方を、妊娠しやすい身体づくりへと応用した内容をお話しします。