コラム
こんにちは。
田中レディスクリニック渋谷の培養室です。
不妊治療をされる患者さまへ、培養室での卵子・精子の様子や、胚の受精・培養の方法などを培養士目線で解説していきます。
今回は採卵後の卵子の「成熟」と「未成熟」についてお話いたします。
採卵して採れた卵子は成熟卵(MⅡ期卵)と未成熟卵(MⅠ期卵とGV期卵)に分けられます。成熟卵と未成熟卵の違いは、精子を受け入れる準備が出来ているかどうかです。
成熟卵は精子と出会う準備が整っており受精可能な状態ですが、未成熟卵はまだ精子と出会わせても受精する能力がない状態です。
通常、自然に排卵される卵子は成熟している状態です。
不妊治療においても同じように排卵が起こるギリギリまで卵胞を育て、成熟卵が採れるタイミングを見計らって採卵を行っています。
しかし、すべての卵子が必ず成熟するとは限りません。
主席卵胞(複数の卵胞が育つ中で、最も大きく育った卵胞)を中心に採卵のタイミングを考えるため、それ以外の小さい卵胞から回収された卵子の中には、まだ未成熟な卵子があることも珍しくありません。
未成熟な卵子であっても、培養方法を工夫すれば体外で成熟させることができるため、基本的には小さい卵胞からも無駄なく卵子を回収します。
どのように卵子の成熟度を判断しているのか?それは卵子の見た目で分かります。
このように、成熟度は3段階に分かれています。GV期から、発育して核が見えなくなるとMⅠ期になり、さらに発育し極体が出現するとMⅡ期(成熟卵)になります。それぞれの見た目の特徴を、培養士が見極めて判断いたします。
成熟卵に対しては、”体外受精=ふりかけ法”(精子の状態が良好な場合)もしくは”顕微授精”により受精をさせます。
未成熟卵は採卵後、培養を継続することで成熟するのを待ちます。成熟した場合、受精方法は”顕微授精”をお勧めしております。これは、もともと未成熟由来の卵子は、成熟したとしても”ふりかけ法”ではかなり受精率が低下するリスクがあるからです。
ある程度待っても成熟しなかった卵子は、卵子不良として培養を中止します。
当院では採れた卵子の成熟度を1個ずつ確認し、その卵子にとってベストな受精方法を提案させていただいております。