コラム
不妊症の原因は女性側にあると思われがちですが、実は不妊症の約50%は男性側にも原因があると言われています。
精液検査は、男性が行う一般的な不妊症検査であり、検査の結果によって今後の治療方針が決まるほど重要な検査です。今回は精液検査の基本的な内容についてご紹介させていただきます。
精液検査とは、1回の射精における精液内の精子の量や運動を調べる検査です。
当院では精子運動解析装置(SMAS; Sperm Motility Analysis System)を用いて測定を行います。
精液量:1回に射出される精液の量を計測します。
精液の量が基準値(1.4 ml)未満の場合、射精管の閉塞や逆行性射精、精液の産生障害が原因となっている可能性があります。
精子濃度:精液1mlあたりに含まれている精子の個数を算出します。
精子濃度が基準値(1600万個/ml)未満の場合は、「乏精子症」と診断されます。
また、精液中に精子がまったく存在しない場合には、「無精子症」と診断されます。男性不妊症の10~15%が無精子症と言われており、ホルモン検査などにより原因を検索します。
運動率:精液中の精子の動きを解析し、運動している精子の割合を算出します。
精子の運動率が基準値(42%)未満の場合には、「精子無力症」と診断されます。
正常形態精子率:精子の形態や大きさを顕微鏡で観察し、形態が正常な精子の割合を算出します。
正常形態精子率が基準値(4%)未満の場には、「奇形精子症」と診断されます。
WHOのマニュアルに記載されている基準値は、1年以内に自然妊娠した男性の精液検査値の下位5%をもとに算出されたものです。基準値は平均値ではなく、「自然妊娠が期待できる最低限の値」を表します。
基準値を上回っているからといって、自然妊娠が保証される訳ではありませんが、逆に下回っていても自然妊娠ができる可能性はあります。
精液の状態は、体調や生活状況によって日々変動します。1度目の検査で悪い結果が出た場合でも、再検査をして問題がないと判断される場合もあります。
WHOのガイドラインでも、1回の精液検査では評価が十分とはいえないと記載があるため、診断結果によっては再検査をお勧めすることがあります。
ただし、高度な精液検査の異常を認める場合や、異常所見が繰り返す場合は、泌尿器科医と連携し診断と治療を行います。
精液検査の結果は、今後の治療方法を決定するための重要な判断材料になります。
精子数が少ない重度の「乏精子症」や、運動率の低い「精子無力症」などの男性不妊は、顕微授精(顕微鏡下で精子を1個選別し、細いガラス管を用いて卵子に直接注入し受精させる方法)の適応となります。詳しくは こちら をご覧ください。
また、「無精子症」と診断された場合には、顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)により、精巣内の精子を回収し、顕微授精を行います。
精液検査結果をお渡しする際に医師、培養士から結果のご説明をさせていただきます。
結果で気になる点がございましたらどうぞ遠慮なくお聞きください。皆さまの不安や疑問に寄り添いながら、しっかりとサポートさせていただきます。
次回は精液検査の具体的な検査の流れと注意点についてご紹介します。