コラム
卵管は、子宮の左右から卵巣に向かって伸びる10cm程度の細長い管状の器官ですです。
妊娠に関して、卵管はとても重要な役割を果たします。
① 卵巣から排卵された卵子をキャッチする
卵巣の先端にある「卵管采(らんかんさい)」という部分が、卵巣から排卵された卵子を受け取ります。
② 卵子と精子が受精する場となる
卵管の途中にある「膨大部(ぼうだいぶ)」という部分が、卵子と精子が出会い、受精する場となります。
③ 受精卵を子宮まで運ぶ
受精卵は、卵管の内側にある繊毛(細かい毛のような構造)や筋肉の収縮によって子宮まで運ばれます。
卵管が閉塞していると、卵子と精子が出会えず受精が成立しません。また、周囲の癒着などにより卵管の動きが不十分だと、受精卵が子宮に到達できず正常な着床ができません。これらが、「卵管性不妊症」の原因になります。
片側の卵管が閉塞している場合でも、もう一方が正常に機能していれば自然妊娠の可能性があります。しかし、両側の卵管が閉塞している場合には、自然妊娠や一般不妊治療での妊娠は難しく、体外受精などの生殖補助医療が適応となります。
女性不妊症のうち、卵管性不妊症は約25〜30%と高い頻度を占めています。
「クラミジア感染症」
性感染症のひとつであるクラミジア感染症は、卵管の動きを低下させ、感染が長期間続くと、卵管が狭くなったり完全に閉塞してしまい(卵管狭窄や卵管閉塞)、妊娠しづらくなることがあります。
性感染症の一つであるクラミジア感染症は、子宮から卵管へと「上行性感染」を引き起こしますが、90%は無症状であると言われています。このため、自覚症状がないまま感染が進行することがあります。
「子宮内膜症」
子宮内膜症が進行すると、骨盤内に癒着や炎症を引き起こします。卵管においても、卵子をキャッチできなかったり、受精卵を正常に運搬する能力が低下し、妊娠しづらくなることがあります。
「子宮卵管造影検査(HSG;hysterosalpingography)」
最も一般的に行われている子宮卵管検査です。
子宮内に造影剤を注入し、子宮から卵管へ流れていく様子をX線透視下で観察し、レントゲン撮影を行います。使用する造影剤は、基本的には身体に無害なものですが、造影剤アレルギーがある方は使用できません。
「超音波下子宮卵管撮影検査(フェムビュー)」
造影剤の代わりに、細かい気泡を含んだ生理食塩水を子宮内に注入し、超音波で観察します。
従来に子宮卵管造影検査と比較すると、造影剤を使用せず、放射線暴露もない、内診台で簡便に行える検査となります。検査にかかる時間は1-2分程度です。
当院では、造影剤を使用せず、短時間で検査可能な 超音波下子宮卵管撮影検査(フェムビュー)を行っております。
検査前 | クラミジア感染症の有無 クラミジアに感染している状態で子宮卵管検査を行うと、感染が骨盤内に広がってしまうリスクがあるため、必ず事前に血液検査を行います。クラミジア抗体が陽性の場合には、パートナー様とご一緒に抗生剤を内服し、2週間後以降に検査を実施します。 |
避妊 検査が終了するまでは、避妊をお願いします。 | |
検査日 | 超音波下子宮卵管撮影検査(フェムビュー) 月経8〜12日目にご予約ください。 お食事は検査3時間前までにお済ませください。 |
子宮内へのチューブの固定 生理食塩水を注入するための細いチューブを子宮内に挿入し、1cmほどの風船を膨らませて固定します。 生理食塩水の注入と観察 経膣超音波で観察しながら、気泡を含んだ生理食塩水を注入します。気泡が卵管を通り卵巣周囲に流出する様子を確認します。 | |
検査後 | 抗生剤の内服 検査後は、細菌の侵入を防ぐために抗生剤の内服をおこないます。 |
痛みが出やすいタイミング
1. チューブを固定する際
検査用のチューブを固定する際、生理痛のような痛みを感じる方がいらっしゃいます。痛みを感じる場合には、固定を調整しますので、遠慮なくお声がけください。
2. 生理食塩水を注入する際
子宮内に生理食塩水を注入し、卵管に流れ始めるタイミングで、痛みを感じる方がいらっしゃいます。少し負荷をかけて注入することで、狭くなっている卵管が通ることもありますが、痛みを感じ始めたら、遠慮なくお声がけください。
痛みが出やすい方
超音波下子宮卵管撮影検査を実施した方への痛みに関するアンケート調査では、以下のような方で痛みが強く出る傾向にあったという結果が報告されています。
・クラミジア感染症の既往がある方
・片方または両側の卵管が閉塞している方
また、「予想していた痛みよりも実際には痛くなかった」 と答える割合が高い結果が出ています。
特に「痛みに弱い」と感じている人ほど、「予想していた痛みより痛くなかった」と答える割合が高いようです。
痛みの感じ方は個人差があり、子宮や卵管の状態によっても変わります。
検査は看護師が付き添いながら行いますので、ご不安に感じられる方は遠慮なくご相談ください。
検査は自費診療となります。
※料金は全て税込価格です。
卵管の通過性は、妊活や不妊治療の方針を決める上で欠かせない検査です。両側の卵管が閉塞している場合には、自然妊娠だけでなく、人工授精などの一般不妊治療でも妊娠する可能性はほとんどありません。
これから妊活を始める方
クラミジア抗体が陽性の場合や、子宮内膜症と診断された事がある場合には、早めに検査をしましょう。
なかなか妊娠しないと感じる方
合併症の有無に関わらず、ある程度不妊期間がある方は、必ず検査をしましょう。
月経8〜12日目でのご来院をお願いしております。生理の出血が終わり、排卵をするまでの期間に検査を行います。
ある程度の不妊期間があり、医師が「不妊症」と判断した場合には、助成金の対象となります。詳しくは医師やスタッフにご相談ください。
はい、検査の前後で鎮痛剤を内服していただけます。
生理食塩水は身体に無害なので、すぐに妊娠が可能です。卵管の通過性が認めれた場合は、検査後に卵管の通りが良くなり、妊娠率が高くなる可能性があります。