PFC-FD™療法

PFC-FD™療法とは

PFC-FD™(Platelet Derived Factor Concentrate Freeze Dry)療法
患者様ご自身の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)から、さらに成長因子だけを濃縮、凍結乾燥(Freeze Dry)した製剤を用いる再生医療技術です​。不妊治療の領域では、以下の効果が期待されます。

1.子宮内への注入:子宮内膜の着床環境の改善
2.卵巣内への注入:卵巣機能の改善

血小板には細胞の増殖や組織修復、血管新生、炎症抑制などを促す成長因子が含まれており、PFC-FD™にはその成長因子のみが高濃度に含まれています​。患者様自身の血液由来であるためアレルギー反応のリスクは低く、安全性の高い治療と考えられています​。
PFC-FD™療法はまだ新しい試みですが、整形外科や皮膚科の領域では実績が認められており、不妊治療の領域でも注目されている治療法です。

※ PFC-FD™は、セルソース株式会社 の提供する商標です。

PFC-FD™の子宮内注入

PFC-FD™を子宮内に注入することで、子宮内膜組織に直接成長因子を届け、子宮内膜の肥厚化子宮内環境の改善を促します。その結果、胚(受精卵)が着床しやすくなると考えられ、胚の着床率妊娠率の向上といった臨床的な効果がもたらされる可能性があります​。

 

期待される効果

PFC-FD™の子宮内注入により期待される代表的な効果は次のとおりです。

  • 子宮内膜の肥厚化
    成長因子の作用で子宮内膜の細胞増殖が促進され、今まで十分に厚くならなかった子宮内膜が、規定以上(一般的に7mm程度以上)に厚くなることが期待できます​。内膜が十分に厚くなると、胚が着床しやすくなるとされています。
  • 子宮内環境の改善
    血小板由来因子の持つ抗炎症・組織修復作用により、子宮内膜の炎症や損傷を治癒する効果が期待できます​。その結果、着床の妨げになる要因を減らし、胚が着床、発育しやすい子宮内環境を作る効果があります。
  • 着床率・妊娠率の向上
    子宮内膜の厚みや環境が改善することで、体外受精における胚の着床率妊娠率の向上が期待されます​。実際に、難治性の薄い子宮内膜症例に対して子宮内投与した研究では、内膜が有意に厚くなり胚移植が可能となった例で、妊娠率の改善が報告されています​。

ただし、すべての患者様で同様の効果が得られるわけではないことに留意が必要です​。効果には個人差があり、内膜が反応しにくいケースもあります。しかし、通常の治療では妊娠が難しかった方にとっては、新たな治療選択肢として試みる価値があると考えられています。

適応となる患者様

PFC-FD™の子宮内注入は、以下のように通常の不妊治療では妊娠に至りにくいケースで特に検討されます。

  • 子宮内膜が薄い方
    ホルモン補充などを行っても子宮内膜がなかなか厚くならない場合、PFC-FD™による治療効果が期待できます。過去の子宮内手術などで子宮内膜基底層が損傷し、慢性的に菲薄化している方などが該当します。
  • 反復着床不全の方
    良好胚を複数回移植しても着床に至らない反復着床不全の方​にも適応となります。このような場合、PFC-FD™の注入により、成長因子がもたらす組織修復効果などが、子宮内膜環境を改善することが期待されます。
  • 子宮内膜炎を指摘された方
    慢性子宮内膜炎など子宮内の炎症が不妊の一因と考えられる場合も、成長因子の抗炎症作用により、子宮内環境が改善する可能性があります。

治療方法

PFC-FD™の子宮内注入は、通常以下の流れで行います。

  1. 採血と製剤作製

    患者様から約50ml程度の採血を行います。採取した血液は専門の再生医療センターへ送られ、血小板から成長因子を濃縮・冷凍乾燥してPFC-FD™製剤を作製します​。作製には約3週間を要します。
    ※ 事前に感染症(B/C型肝炎・HIV・梅毒)の陰性を確認します。

  2. 子宮内への注入

    胚移植周期に子宮内注入を行います。具体的には、胚移植周期の月経10日目頃と12日目頃の計2回注入を行います​。注入は細く柔らかいカテーテルを使用し、麻酔は不要で、処置時間も数分程度で終了します。

  3. 胚移植

    2回の注入後、子宮内膜の厚さ・状態を確認し、問題なければ胚移植を実施します​。PFC-FD™により十分に肥厚し、環境が整った子宮内膜に胚を移植し、その後の着床を期待します。

副作用はほとんどありませんが、まれにカテーテル挿入による軽い出血や下腹部痛が起こることがあります。なお、この治療により必ず内膜厚が改善するわけではないため、胚移植前に内膜厚が十分にならなければ、その周期の移植を見送る可能性もあります。

※ 当院の胚移植周期については こちら を参照ください。

 

PFC-FD™の卵巣内注入

PFC-FD™を卵巣組織内に直接注入することで、成長因子が血管新生を促進し血流を改善するほか、休眠状態の原子卵胞を活性化したり、卵胞の発育を助けたりすると考えられています​。これにより、卵胞数や採卵数の増加や、ホルモン分泌能の向上、卵子の質改善といった効果が期待され、妊娠率や出生率の向上につながると考えられます。

期待される効果

PFC-FD™の卵巣内注入により期待される代表的な効果は次のとおりです。

  • 卵巣機能の改善
    成長因子の組織再生・血流促進効果により、卵巣組織の活性化が図られます​。これによって卵巣機能低下の症例においても、月経周期の再開や排卵機能の復活が期待されます。
  • 卵胞数・採卵数の増加
    卵巣内で休眠している原始卵胞を活性化し、発育する卵胞の数を増やす可能性があります​。実際に、卵巣機能が高度に低下した患者に対して血小板製剤(PRP)を注入後、AMH値の上昇や超音波で観察できる卵胞数の増加が報告されており​、一部の患者様では自然妊娠の成立も確認されています​。
  • 卵子の質改善
    成長因子は卵子の成長過程にも良い影響を与える可能性があります。血小板製剤(PRP)の卵巣内注入により、体外受精での成熟卵子の回収率が増加し、胚盤胞の形成数が増加したとの報告があります。また、PRP治療後に染色体正常胚が得られたとの報告もあります。

適応となる患者様

PFC-FDの卵巣内注入は、以下のようなケースに対して検討されます。

  • 卵巣機能が低下している方
    加齢早発卵巣不全(POI)などで卵巣予備能(卵子の在庫と質)が低下している方が主な対象です​。具体的には、AMH値が低い、基礎卵胞数(AFC)が少ない、あるいはFSH高値などが認められるなど、卵巣機能低下と判断される方が該当します。
  • 体外受精での卵胞発育が不良の方
    過去の体外受精で、卵巣刺激に対する反応が鈍く卵胞が十分育たない方や、毎回の採卵数が極めて少ない方、あるいは卵胞が育たず採卵中止となった経験がある方も適応となります​。こうした難治性の反応不良症例に対し、血小板製剤(PRP)を卵巣に注入して採卵数の増加を図った国内外の報告があり、PFC-FD™でも同様の効果が期待できます。

治療方法

PFC-FD™の卵巣内注入は、通常以下の流れで行います。

  1. 採血と製剤作製

    患者様から約50ml程度の採血を行います。採取した血液は専門の再生医療センターへ送られ、血小板から成長因子を濃縮・冷凍乾燥してPFC-FD™製剤を作製します​。作製には約3週間かかります。
    ※ 事前に感染症(B/C型肝炎・HIV・梅毒)の陰性を確認します。

  2. 卵巣内への注入

    次回以降の採卵数の改善を目的として、原則採卵と同時に行います。採卵後、経腟超音波で卵巣を確認しながら、採卵針を用いて卵巣内にPFC-FD™を注入します。処置後は30分程度安静にして頂き、問題がなければ帰宅可能となります。

  3. 採卵周期

    PFC-FD™の効果は、早くて翌周期から現れ一定期間持続するものと考えられます。その為、卵巣の状態やホルモン値を観察しながら引き続き採卵を行い、採卵数の増加を目指します。

処置後の副作用・リスクとしては、穿刺に伴う出血や感染症の可能性がわずかにありますが、適切な予防策を行えば重大な合併症が起こることはまれです。

※ 当院の採卵周期については こちら を参照ください。

料金

自費診療
PFC-FD™療法
  • PFC-FD™子宮内注入
    220,000円
    ※ PFC-FD™作製代・子宮内注入処置代を含む
  • PFC-FD™卵巣注入
    253,000円
    ※ PFC-FD™作製代・卵巣注入処置代を含む

※料金は全て税込価格です。

よくある質問

PFC-FD™とPRPの違いはなんですか?

どちらも血小板に含まれる成長因子を利用した再生医療です。
多血小板血漿(PRP;Platelet Rich Plasma)は、採血した当日に遠心分離を行い、そのまま使用します。PFC-FD™は、PRPから成長因子を濃縮し凍結乾燥させることで、保存性が高まり、より安定した成分の利用が可能となりました。
※ PFC-FD™は、セルソース株式会社 の提供する商標です。

どれくらいの人に効果がありますか?

効果には個人差があり、すべての方に明確な効果が出るわけではありません。国内外で、子宮内膜が厚くならない方や、卵巣機能が低下している方にPRP療法やPFC-FD™療法の効果がみられるとの報告がありますが、まだ症例数は限られています。
既存の治療で結果が出ない患者様で効果が見られる可能性はあるが、人によっては無効な場合もある」というのが現時点での見解です。あくまでも妊娠率向上のための補助的な選択肢であり、医師と相談のうえで治療をご検討ください。

どのような人が対象になりますか?

通常の不妊治療では効果が出づらく、なかなか妊娠に至らない「難治性不妊」の方が対象となることがあります。
子宮内膜が薄い方:ホルモン補充などを行っても子宮内膜が厚くならない方
反復着床不全の方:良好胚を複数回移植しても着床に至らない方
卵巣機能が低下している方:加齢や早発卵巣不全(POI)などで卵子の在庫や質が低下している方
体外受精での卵胞発育が不良の方:卵巣刺激を行っても、卵胞が十分に発育しない方

上記に当てはまる方でも、治療効果が保証されるものではありません。
医師と相談のうえで治療をご検討ください。

副作用や痛みはありますか?

PFC-FD™療法は、患者様ご自身の血液由来成分を使用するため、アレルギー反応や拒絶反応は極めてまれであり、安全性は高いとされています。
ただし、処置に伴う軽微なリスクはあり、子宮内注入ではカテーテル挿入による軽度の出血下腹部の違和感、卵巣注入では穿刺時に一時的な痛みや、ごく稀に卵巣出血感染症のリスクがあります。いずれも適切な処置や予防によってリスクは最小限に抑えられ、ほとんどの方は大きな問題なく処置を終えられます。

保険は使えますか?費用はどれくらいですか?

現時点で、PFC-FD™療法は自費診療となり、保険は使えません。
当院での診療料金は以下の通りです。

自費診療
PFC-FD™療法
  • PFC-FD™子宮内注入
    220,000円
    ※ PFC-FD™作製代・子宮内注入処置代を含む
  • PFC-FD™卵巣注入
    253,000円
    ※ PFC-FD™作製代・卵巣注入処置代を含む

※料金は全て税込価格です。