コラム
AMH;anti-Müllerian hormone(抗ミュラー管ホルモン)とは、卵巣にある発育初期の卵胞(卵子が入っている袋)の細胞から分泌されるホルモンです。
発育段階にある卵胞の数を反映しているため、血中のAMH値を測定することにより、卵巣予備能(卵巣にあとどのくらい卵子が残っているか)を推定することができます。
女性の卵子は、生まれる前の胎児期に作られて以降その数が増えることはありません。作られた卵子は、成熟の途中で眠った状態になっており、思春期以降に順番に成熟し排卵します。
しかし、作られた卵子がすべて排卵するわけではなく、その多くが時間の経過(=年齢)とともに減少していきます。卵子の残りが少なくなるのを反映して、AMH値も年齢とともに低下します。
2016年の調査により、各年齢におけるAMH測定値の中央値が報告されています。
前述の通りAMH値は年齢とともに減少して行くため、AMH 値=「卵巣年齢」と捉えられがちですが、以下の点に留意する必要があります。
AMH検査は、 個別の 卵巣予備能 の評価や、生殖補助医療(ART)での卵巣刺激に対する 卵巣の反応性 を予測するために用いられます。
そのため妊活や不妊治療においては、現在の卵巣の状態を把握したり、今後の計画や治療方針を立てるためにとても重要な検査項目です。AMH検査は、月経周期に関係なく測定可能な採血項目ですので、初診時に検査することをおすすめいたします。
AMH値が低いというだけでは、妊娠できる可能性が低いとは言えませんが、まだ不妊治療を開始していない方は、治療開始のタイミングや今後の計画を立てておくことをおすすめします。ぜひ、医師にご相談ください。
また、生殖補助医療(ART)においては、AMH値が低いと平均採卵数が少ない傾向にあります。そのため、卵巣の状態に合わせた治療方法を個別に検討する必要があります。こちらも、医師と相談のうえ治療を進めていきましょう。
AMH値は、高ければ高いほどいいというものでもありません。
AMH値が高い場合、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)である可能性があります。PCOSとは排卵障害をきたす代表的な内分泌疾患で、月経周期異常や高アンドロゲン血症を呈します。月経不順でお悩みの方は、AMH検査と併せて女性ホルモン検査や超音波検査をおすすめします。
また、生殖補助医療(ART)では、AMH値が高いと卵巣刺激に反応しすぎてしまう卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になるリスクがあります。OHSSを回避するためにも医師と相談のうえ、適切な治療法を選択する必要があります。