コラム

精液検査〜実践編〜

前回のコラムでは、精液検査の基礎編として基本的な内容をご説明し、精液検査の重要性を知っていただけたと思います。今回は、精液検査を受ける際の注意点や、実際の検査の流れをご説明していきます。

精液検査はいつ受けたらいいの?

繰り返しになりますが、不妊症の約50%は男性側にも原因があると言われています。
精液検査は男性が行う一般的な不妊症検査であり、検査の結果によって今後の治療方針が決まるほど重要な検査です。

例えば、女性の検査結果に異常がなくても、精子の数や運動率の低下により自然妊娠が難しい場合があります。精液検査の時期が遅れてしまうと、不妊期間が長引いたり、人工授精や体外受精にステップアップするタイミングが遅れてしまう可能性があります。

女性の不妊症検査と並行して、男性も精液検査を受けることをおすすめします。

検査までの禁欲期間

正確な検査結果を得るためには、精液検査前に禁欲期間を設けることが推奨されています。
一般的には 2〜5日間 の禁欲が理想的とされています。


短すぎると精子の数が不十分となり、逆に長すぎると精子の運動性が低下する可能性があるため、この期間を守ることが大切です。

ご予約について

精液検査には、男性の方ご本人のIDでのご予約が必要となります。
平日17時以降は精液検査を受け付けておりません。ご注意ください。

初診時に精液検査をご希望の方は、WEB問診にてご希望の検査をお選び下さい。(16時30分までのご予約をお願いいたします。WEB問診票の記載がない場合、当日お受けできないこともございます。)
再診の方は、当院WEB予約システムより「精液検査(院内)」または「精液検査(持参)」をご予約ください。

また、精液検査など院内で精液を取り扱うにあたり、感染症検査(B型肝炎・C型肝炎・梅毒・HIV)が必要となります。他院での検査結果(3ヶ月以内)をご持参いただくか、当院での血液検査をお願いいたします。

精液検査の流れ

精液はご持参いただくか、院内の採精室(メンズルーム)をご利用いただけます。

【1】院外採精
自宅などから精液をご持参いただく場合には、事前に検査用の容器をお渡しいたします。

  • 細菌の混入を防ぐため、性器と手指を清潔な状態にしてください。
  • マスターベーションにて射精します。お渡しした容器内に、射精された精液を全量入れてください。
  • 容器の内側になるべく触れないよう、蓋を閉めて下さい。
  • 採取から2時間以内にご持参ください。ご持参される際には20〜25℃を目安に、温めすぎや冷やしすぎにご注意下さい。
  • 来院後は受付を済ませてから、お近くのスタッフへお声がけください。精液の提出場所をご案内いたします。

※ 精液をご持参される際、カイロなどで必要以上に温めすぎたり、保冷材で冷やすことはしないでください。持ち運ぶ際に精液が容器からこぼれないよう、容器の向きや蓋に注意してください。

【2】院内採精
ご来院いただき、院内の採精室(メンズルーム)をご利用下さい。

  • ご予約の時間に来院されましたら、受付を済ませてお待ち下さい。
  • 検査用の容器とテレビのリモコン、ソファに敷いてご利用いただくシートをお渡しいたします。
  • 細菌の混入を防ぐため、性器と手指を清潔な状態にしてください。
  • メンズルームに入室し、マスターベーションにて採精します。お渡しした容器内に、射精された精液を全量入れてください。
  • 容器の内側になるべく触れないよう、蓋を閉めて下さい。
  • 提出用窓口にある呼出ボタンを押して、スタッフをお呼びください。

【3】結果説明
当院では、精子運動解析装置(SMAS)を導入しており、短時間で正確な検査結果を得ることができます。
検査時間は約30分程度で、個室にて培養士または医師より結果をご説明いたしますが、診療状況によってはお待ちいただく場合があります。精液検査結果は後日お伝えすることも可能です。

院内メンズルームのご紹介

当院のメンズルームには次のような設備が整っています。

  • 一人掛けソファー
  • テレビ画面
  • 防音ヘッドフォン
  • ティッシュ
  • 除菌シート など

【プライバシーの確保】
メンズルームは待合スペースからは見えない場所にあるため、入退室時に人目を気にする必要はありません。
外側に札をかけることで採精中であることが分かり、また内側から鍵がかけられるため、使用中に誰かが入ってくる心配もありません。
プライバシーが確保された空間でリラックスしながら採精を行うことが出来ます。

慣れない環境での採精は、思うように上手くいかない場合がございます。
メンズルームのイメージを持っていただき、少しでも抵抗感なくご利用いただければと思います。

精液所見をよくするために

精液所見は体調や生活習慣で変動します。そのため、1度目の検査結果が思わしくなかった場合でも、再検査をおすすめする場合があります (※ 高度な精液所見の異常を認めた場合には、泌尿器科医と連携し診断と治療を行います)。

精液所見を向上させるために、以下のような生活習慣を意識してみましょう。

バランスの取れた食事
亜鉛 は牡蠣、牛肉、ナッツ類などに豊富に含まれており、精子の生成を促進してくれます。
ビタミンC・E には抗酸化作用があり、精子のDNAを保護します。柑橘類、ピーマン、アーモンド、ほうれん草などに多く含まれています。DHAEPA も精子所見を向上させると言われており、青魚(サバ、イワシ)や亜麻仁油にはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。
いずれの栄養素も、サプリメントで過剰に摂取する必要はありません。栄養素を含んだ食品を、バランスよく摂取することが大切です。

適度な運動
週に3〜4回、30分程度の有酸素運動や筋力トレーニングを行うことで、ホルモンバランスが整い、精子所見が向上します。過度な運動は逆効果になる可能性があるため、適度な範囲で行うことが大切です。

ストレス管理
慢性的なストレスはホルモンのバランスを崩し、精液所見を低下させる原因となります。仕事や生活のストレスを減らす工夫や、良質な睡眠を十分に取ることも重要です。

禁煙・適度な飲酒
喫煙は精子の運動性を低下させ、DNA損傷を引き起こすリスクがあります。喫煙は精液所見に直結します。また、過度のアルコール摂取は精子の生成を妨げるため、適度な量の飲酒が望ましいと言えます。

適切な体温管理
睾丸は体温よりも低い温度で精子を生成します。長時間のサウナや熱い風呂、膝上でのノートパソコンの使用など、睾丸を温めすぎる行動は避けましょう。

よくある質問

院内採精と院外(自宅)採精ではどちらがいいですか?

院内採精と院外(自宅)採精では、基本的にデータに大きな違いはありません。しかし、院外で採精した精液をお持ち込みいただく際には温度が極端に変化したり、採精から2時間以上経過すると、精子の運動率が低下する可能性があるため注意が必要です。

精液を持ち運ぶ際は、どの様にしたらいいですか?

自宅で採精してから精液を持参する場合には、温度管理に注意が必要です。20〜25℃に保つため、以下のような方法があります。

① 寒い時期には、カップをタオルで包んで保温バッグに入れて運ぶ
② 容器を内ポケットや肌着の中など、人肌に近い場所に入れ直射日光を避けて運ぶ
③ 真空断熱のスープジャーを適温に準備し、その中に入れて運ぶ

精液検査だけを受けたいのですが、可能でしょうか?

院内で精液を取り扱うにあたり、感染症検査(B型肝炎・C型肝炎・梅毒・HIV)が必要となります。他院での3ヶ月以内の検査結果をお持ちいただくか、3ヶ月以内の検査歴のない方は、当院での感染症検査をお願いしております。

初診時に精液検査は可能でしょうか?

ご希望の方は、初診時にも精液検査を受け付けております。WEB問診票に検査希望の旨をご記入ください。(WEB問診票の記載がない場合、当日お受けできないこともございます。)

また、17時以降の精液検査は受け付けておりません。初診時に精液検査をご希望の方は、16時30分までのご予約をお願いいたします。

予約をしていないのですが、精液検査は可能でしょうか?

精液検査はご予約制です。当日検査を希望されても、診療状況などによりお受けできないことがありますので、必ず事前にご予約をお取りください。