コラム

東洋医学と妊娠しやすい身体づくり その②

前回のコラム では、東洋医学の基礎的な考え方についてお話しました。
少しむずかしい内容となってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。

ここからは東洋医学の考え方を妊活や不妊治療に応用し、妊娠しやすい身体づくりについて解説していきます。

妊活や不妊治療に使われる漢方薬

 五臓のひとつ、「腎」は生命の根本であり、妊娠においても重要な役割を果たしています。腎は「先天の本」とも言われ、両親から受けついた「先天の精(エネルギー源)」を蓄えています。「先天の精」は減る一方で増えることはないため、妊活や不妊治療にあたっては、腎の働きを保つことはとても重要です。
 加齢や不摂生による「腎」の機能低下や、難治性の不妊症には、身体を潤す力が不足する「腎陽虚」と、身体を温める力が不足する「腎陰虚」をともに補強する「八味地黄丸(はちみじおうがん)」が良く使われます。

 また、妊活や不妊治療が長期になると、身体のエネルギーとなる「気」が不足し、「気虚(ききょ)」の状態になりやすくなります。脾は胃と協力して、飲食物から「気」と「血」という栄養物質(=「後天の精」)を生成しているので、妊活や不妊治療を始める際には、脾と胃の機能を整えることが重要です。
 胃腸虚弱の方には「六君子湯(りっくんしとう)」などの人参剤を、身体疲労の方には「補中益気湯(ほちゅうえきとう)」などの参耆剤(じんぎざい=人参+黄耆)が良く使われます。

 東洋医学には「不通不孕、不営不孕(つうぜざれば、はらまず。さかえざれば、はらまず)」という言葉があり、卵巣の血流の低下とともに卵子の質が低下し、ARTの治療成績は低下すると報告されています(JISART『結果の出せる不妊治療』より)。そのため、子宮と卵巣に十分な血液を循環をさせることで、妊娠しやすくなる可能性があると考えられています。
 子宮と卵巣の血液循環と冷え症の改善には、当帰・川芎などの活血剤や、当帰・白芍などの補血剤を含む「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」や「温経湯(うんけいとう)」が良く使われます。さらに瘀血がひどい場合には、活血効果が強い牡丹皮や桃仁を含む「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」や「加味逍遙散(かみしょうようさん)」などが使われます。

自分でできる妊娠しやすい身体づくり

ライフスタイルを見直しましょう

 妊娠しやすい身体づくりのために、ご自身のライフスタイル(=食事、運動、睡眠など)を見直しましょう。

 身体の原動力となる「気」「血」は、食べた物が消化・吸収され生成される栄養物質です。妊娠しやすい身体づくりのために、栄養のバランスがとれた、消化しやすい温かい食事を心がけましょう。また、適切な運動は血液を循環させ、五臓の機能を上げることで、冷え症や瘀血(おけつ)、浮腫みなどが改善されます。
 ストレスは女性ホルモンの天敵です。ホルモンバランスを整えるためには、ストレスは適切に発散し、規則正しい生活と質の良い睡眠をとることも大切です。

身体を温めましょう

 身体が冷えて、血液の循環が低下すると、「気・血・水」のバランスが崩れてしまいます。
 子宮や卵巣での血液循環の低下は、排卵障害や不妊症、流産などを引き起こしやすくなる可能性があり、身体の保温、特にお腹や腰回りの保温が大切です。

自分の身体に関心を持ちましょう

 「四診(ししん)」をご自身の生活にも取り入れてみましょう。
 毎日鏡と向き合い、顔色や舌の様子を観察します。顔色は悪くないか?舌の色に変化はないか?ご自身の肌やお腹、脚に触れてみます。浮腫みはないか?冷え症はないか?チェックしてみましょう。

 自分の身体に関心を持つことで、ご自身の体調をより把握しやすくなります。

当院の漢方外来

 ここまで、東洋医学と妊娠しやすい身体づくりについて解説してきました。

 当院では、院長による漢方外来を開設しております。漢方専門医と生殖医療専門医、両分野の知識と経験を活かし、妊活や不妊治療に向けた身体づくりからサポートいたします。

 詳しい診察や治療をご希望の方は、HP上の予約ページよりご予約ください。皆さまのご来院を、心よりお待ちしております。